[時事] 外国人研修生制度(4)−4 法律は蝉の抜殻か
埼玉在に住みついた私の近辺ではひねもす蝉が鳴きくらします。 初夏から秋にかけての季節の変化を蝉の生態が確実に知らせてくれるのです。 先ず初夏のニイニイ蝉、次は油蝉、ミンミン蝉(クマ蝉か?)、ツクツク法師で夏は完全におわります。今は暑い盛りのミンミン蝉、さすがに私も高齢者徘徊を自粛してますから体調はよろしくない、かといって炎暑の街歩きでぶっ倒れれば世間様にご迷惑です。と…、移動、行動の自由は自重中、そこで只今は言論の自由? に特化しております。……
さて、三回までの経過で芸娼妓開放令と外国人研修制度の共通点が先ず”人身取引、奴隷的労働”を助長する根源となった法規定を”建前と本音で使い分ける”行政、司法の存在がありました。集団的自衛権との共通点?、は後述といたしまして、先ず研修生の職場と待遇の解明から始めます。……
私が度々足を向ける千葉県銚子漁港では寄港して水揚げ仕込みをする近海マグロ延縄漁船には数人単位で働くインドネシアの素朴な若者を見掛けます。 漁港には入港漁船員の福祉施設がありますが、銚子では外国人研修生(漁船員)の施設として活用しているようです。 また水産加工業地帯は銚子には珍らく若い人達を見かけますが、実は多数の中国人研修生が働いている事がわかります。
それでは…研修生斡旋のブローカーが組合、その組合員が雇用主の図式ですが、この組合員企業とその業種を精査すれば明らかに日本人の雇用要件を満たせない低賃金で職場環境、将来保障が整わない零細企業が明白なのです。 この外国人研修生制度の発案の詳細は知りませんが、現在の実情は人身取引、奴隷的労働が世評される事態になっております。…経済団体の要望に沿って労働源として低賃金でフレッシュな労働者の獲得を目的に外国人研修制度活用を提案した知恵者の、お役人?か政治家?がいたのでしょう。 この制度では3年間の日本滞在と仕事が保障されるので、送り出し国の若年層に一定の人気があり現地組織(ブローカー)は研修生から保証金を徴収し規約を作成し”かすり”を取れる状態で送り出します。 …日本在住研修生は約20万人とされますが、この受け入れ企業(組合員)の業種は繊維製品製造業,食料品製造業,農業,建設関連工事が多数を占め、対応もまさに昔の女郎屋楼主の如き社会悪の事例が多発しております。
日弁連の資料を調べますと……
◆人権侵害の典型例……パスポートや外国人登録証,印鑑,通帳などの取上げ、強制預金。
人権侵害の事例(1)…研修生,実習生の移転の自由の制限として,携帯電話の所持,架電,外出,手紙の送付,インターネットカフェの利用,受入れ機関の職員以外との会話の禁止など
人権侵害の事例(2)…女性への性的虐待、社長が女子寮に勝手に入ってきてベットで寝たり嫌がらせをする、胸を触ったり卑猥なことを言う、社長と実習生の間の構造的な力関係…強制帰国などが卑劣なセクハラ行為を助長している。 その他、若い中国人女性研修生が,農家で農業の研修を受ける予定であったのに,使用者の自宅の使用人として働かされ,日常的に強姦被害を受けていた事例。
◆労働規準法違反…労働災害、長時間労働,残業代不払い,重要書類破棄など。
労働基準法違反の事例(1)…過労死、労働基準監督署の調査の結果,死亡直前3〜5か月の時間外労働が93〜109時間であることが確認され死因が業務に係わるとして労災支給決定された。また、残業代時給の悪質な事例として300円程度が多数、さらに100円の例も散見される。強制預金については賃金からの天引きを行った上で実習生名義で預金し,その預金通帳を受入れ機関が預かり本人に渡さず、本国の送出し機関に送金する。本人が送金を拒否すると強制帰国させる。…本国と日本のブローカーが結託している事例。
労働基準法違反の事例(2)…技能講習を修了していない技能実習生にクレーンの運転業務を行わせ、運転業務中に負傷したにもかかわらず、雇用主は労働者死傷病報告を提出しなかった悪質な事例。 …技能実習生が穴あけ作業中に左中指を失ったあと,労災申請をしないまま,本人の意に反して帰国させられた。(強制帰国)…手、指(腕)の労働災害が多発しているが受入れ機関により労働保険や傷害保険の利用を妨げられる事例。……
◆なおメディアの報じる実態は多岐に渡りドギツイ事例は省略して、多くの人がショックを受けた普通の取材レポートの一事例……工場の壁に表が貼ってあって、外国人研修生・技能実習生の名前が一人ひとり書いてありました。その表には、1日に何回トイレに行ったかを書き込んでいるのです。1回トイレに行ったら1分間で70円の罰金と書いてある。後で調べてみたら実際には罰金は徴収されていなかったのですが、現場の外国人研修生に対して脅しとしてトイレの回数と時間まで拘束することで、1分でも長く働かせようとしていたわけです。……
以上社会悪と蝉の抜殻法規が相乗された事例でした。
典型的な《蝉の抜殻》法律と制度の実際
◆集団的自衛権
《蝉の抜殻》→日本国憲法第九条…条文内容には「平和主義」「戦力の不保持」「戦争の放棄」「交戦権の否定」が明確に記載されている。安倍政権以前の歴代内閣法制局の見解として集団的自衛権行使は第九条の範囲を超えるものと統一されておりました。安倍首相は法制局長官を罷免、意に適う人物に差し替え、憲法無視ともいえる法案を最も安易な閣議決定をして外国での戦闘参加の道を開きました。憲法改正の王道を無視した軽薄な私的憲法解釈は天に唾する結果を招来するかも知れません。
◆娘身売り(人身売買)
《蝉の抜殻》→芸娼妓解放令(大日本帝国政府布告明治5年と借金無効の司法省達)…娘身売りの復活は新公娼制度にあり最高裁の判例、警察の宰領などが娘身売りの復活定着を招いた。女郎屋(遊郭)は警察署の管理業務で親密な関係を構築していた。
◆外国人労働者の人身取引と奴隷労働
《蝉の抜殻》→外国人研修生制度(日本国の制度)…制度の趣旨…外国人研修生が技術や知識を習得し帰国後、その技術を活用する為の国際貢献の制度。…制度改訂時に自民党議員と中小企業経営者福祉事業団(当時)との贈収賄事件がありました。…自民党元法務副大臣の河野太郎議員は自身のブログて、日本の外国人労働者受け入れ政策を「ほとんどイカサマ」と発言しています。 ”知ってか知らずか”この制度の拡大強化を得々と公表した安倍総理大臣の資質が疑われています。
◆パチンコ景品の換金
《蝉の抜殻》→賭博罪(日本国刑法)…警察官僚と業界の癒着が常に俎上に上がります。遊戯業界は警察の管理監督下、匙加減で滅亡、盛業の力関係にあります。許認可、営業規則、遊技機導入など総てに及びます。旧女郎屋(遊郭)と警察の関係と同じ。
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《外国人研修制度》(4) 法律は蝉の抜殻か
(3) 外国政府機関の疑念と日本政府の趣旨
(2) 人身売買(娘身売り)の実態は法律より社会悪
(1) マリア ルス号事件