[地域] 港ヨコハマ(3)−6 コンテナ革命と街の現象

海運のコンテナ革命が起る以前の横浜旧市街は上陸した船員の憩いの街として酒と女性の歓待場所のバーなど夜の飲食店が繁盛し港町の風情がありました。昭和30年代には海運界を席捲したギリシャ系船主所有のギリシャ船の入港が多くギリシャ人船員相手のバーが増えてギリシャ語の看板が目立つ程でした。シーメンズクラブなども関内や主要埠頭付近に在った記憶がありのますが、ほぼ消滅したのでは?…
現在では数少ない横浜入港船も埋め立て地の本牧埠頭や大黒埠頭などに停泊しております。では、新設埠頭のコンテナ船の上陸船員は何処で遊ぶのか?……先ず上陸など致しません。これもコンテナ物流革命がもたらした現象の一つ、コンテナ船は省力自動化の高速大型船です、入港し積荷のコンテナは埠頭のガントリークレーンで高速荷役で短時間に終了します。岸壁係船は時間単位の寄航に過ぎず船員が上陸休養などする時間がありません。…陸運の定期便トラックがターミナルに立ち寄るのと全く同じ程度のスケジュールでしょう。今のヨコハマでは過ってのマドロスさんとかシーメン,海員、船員の類は上陸しないのですから街中にはおりません。……

Photo…日本郵船 香取丸1913〜1941 欧州航路貨客船 野上隼夫画
しかし、話は飛んで、それでも海が好きだ!七つの海に飛躍したい!世界を航海したい!と考える若い方が居たとしても日本人には外航船員の道は閉ざされており、昔は船員養成の学校として、全国に海員養成所(海員学校)、商船学校、商船大学などがあり、現在も存続しておりますが卒業生船員希望者(外航船舶)に日本の海運会社の採用はほぼ皆無です。(但し内航船求人あり)学校自体のカリキュラムも一般職業科が大勢です。
……どうしても船舶海上生活をご希望ならば、早い話が海上自衛隊の幹部、曹士の道があり、艦船勤務が可能ですが、今の安倍総理大臣さんが戦争好きな方で憲法を無視した戦争法律を創りましたので、…残念ながら命の保障はできません! では……最早、過去の出来事で恐縮ですが、昭和30年前後の労働組合華やかなりし時代、日本労働界の超有力組合が日本海員組合でした、それ程船員を職とする人々の数も多く、高賃金の代表的な仕事でした。今の春闘の前身的なゼネラルストライキのリーダー役が海員組合で外国港湾停泊船なども一斉にストライキ決行と先鋭的で、日本経済発展以前の花形職業だった時代です。…

”好事魔多し”の類か…膨張する人件費に悩む日本海運業界の究極の選択は自社保有船を外国籍に置き換える便宜地籍船として他国並みの国際競争力の獲得でした、当然日本国の税制、法律に縛られる事も無く競争力強化の即効薬として、チープな税金対策、コストの安価な外国人船員の混乗から始めて、現在では船長以下全船員が外国人による運行が常識となっております。また、フィリピンなどには日本国大手海運各社が自社商船学校を保有し幹部船員養成もしているのです。…逸話として、この日本国海運無国籍化により日本古来の慣習が失われています、往時世界の港の常連日本船の代名詞がマルシップと呼ばれていましたが、昨今は外国化した船名を使用して……○○○○丸(maru)は外航船海運会社は使用しないようです。
二年前にインド洋上航海中のMOL(商戦三井株式会社)所有の最新大型コンテナ船コンフォート(船籍バハマ)が船体破断して沈没した事故の運航はロシア人船長以下、フィリピン人14名、ロシア人11名、ウクライナ人1名の外国人船員で構成されておりました。…既に世界標準として先進国の船員コストでは究極の国際競争に勝ち残れない現状があります、反面、寄港地入港も時間単位と云う、一旦乗船すれば陸上生活と隔絶した船上の閉塞生活を強いられる職業は途上国向きの職業なのでしょう。……
更なる一面として各種人工衛星と通信用人工衛星インマルサットIT技術革新による船舶自動化に伴い往時の船員に必須の航海技術知識教養が可なり軽減される結果となって、極言すれば自動車を運転する時、搭載ナビを上手に利用すれば知らない場所も誰でもが簡単に行く事が出来ます。この技術を先取りしたのが、船舶のIT航法です。「航海の基本」自船位置の瞬時明確な決定や寄港地へ向けて自動操舵が出来ます。陸上の海運会社事務所でも常に各運航船の位置、海洋気象、進路、航跡、実速、機関の回転数から故障警報などデーター通信で把握できるのです。……まず想像できる事は操船自動化した船舶を陸上オペレーターによる監視とコントロールで自動無人化船の運航です。…
…今話題の自動車の自動運転、高速鉄道無人運転と同じく近い将来の海運業の運航業務は無人自動化船の入出港時や特定海域通過時のみ、パイロット(水先案内人)と伴にオペレーター(船員)が乗船して操船するだけのシステムになるかも?  …… 先へつづく… ……前へ戻る

《港ヨコハマ》
(6) 横浜市の裏窓を覗く
(5) ネイティブ横浜 黄金町 真金町 永楽町
(4) 横浜の下町 中区の今昔
(3) コンテナ革命と街の現象
(2) 時代は終わった!激変メカニズム
(1) 消えたセンチメンタル