[地域] 日本橋界隈の人脈(2)−6 青島幸男 鼠小僧次郎吉 仕立屋銀次

青島幸男さんは元東京都知事で昔で言えば東京の殿様のようなお方ですが、…あとのお二人方は江戸末期、明治初期の盗賊、スリを稼業とした伝説的実在者です。
…お江戸日本橋がお好きな方々には有名な明治生れの女流作家長谷川時雨さんの著書「旧聞日本橋」は明治初期の日本橋の中心地”大伝馬町”「大門通り」界隈のお話が利発な少女の眼に映った明治時代初期の実態が興味深く記されております。
吉田松陰も露と消えた小伝馬町牢屋敷は時雨の父親、お玉が池千葉道場元剣士の深造が詳しく概略図も書き様子を語っており、名店「大丸呉服店」(大丸デパートの前身)や界隈に住む人々の生活ぶりには驚かされ、お妾さんが沢山住み、子供達は”カタツムリ”を焚き火で焼いて食べたり、親戚の元旗本が落ちぶれて娘二人を芸者に売り飛ばし娘のお陰で芸者屋を開業し”お父さん”に納まる話、八百屋の娘がいつの間にか身売りされ居なくなる話など明治時代の庶民生活を知るバイブルの様に思えます。……
と云う事で日本橋界隈の庶民に紛れ、住み着いていた鼠小僧次郎吉 仕立屋銀次の部分を御紹介します。…岩波文庫「旧聞日本橋」 長谷川時雨作より
時雨の家近くに住む仕立屋、井坂さんの話から始まります。
………井坂さんは類まれな世話やきの親切者だった。……そこの店にスリで有名になった仕立屋銀次がいた。あのころ、親方浜さんも大たぶさ、銀次も大たぶさだったかと、うろおばえではあるが覚えている。銀次という職人は青い顔の、眼の横に長い、刀のような目付きの人だったと思う。祖母が言ったことがある、あの職人は、鼠小僧によく似ていると、

<老母よりの書信>
………三光新道が鼠小僧の家、母親と妹がすまっていて、妹には旦那があって、その旦那の来ている時は、表のこうし戸の前に万年青の植木鉢が出してある。鼠小僧は小がらな、うすあばたのある、ちいさなよき男のよし、その母は引廻しのひにとうといお寺へ参って坊さんになったそうです。………
……祖母はよく見て知っていたといった。引廻しの時も、前のうまやから馬が出て大通りを通ったが結城の着物をきて薄化粧をしていたといった。(注)三光新道→三光稲荷の横丁の事で現在でも日本橋堀留二丁目(旧日本橋区和泉町)にあり、落語「百川」で常磐津の師匠歌女文字さんの住まいも三光新道です。


日本橋堀留、ここまで来れば堀留の弁当屋弁菊の次男として生まれた青島幸男さんに話は移ります。このお方は早稲田大学出身の直木賞作家であり、放送作家、主演役者、作詞者、国会議員、東京都知事と超多才なマルチタレントぶりはTV関連の仕事で圧倒的な人気振りでした。 未だに、印象的なのはクレージイーキャッツの植木等さんの歌に象徴されるギャグのようなナンセンスな作詞は私は今でも時々口ずさみます。
……マジメが嫌いな世代と云えるのか、やはりTV初期時代をリードした人々に永六輔、中村八大、いずみたく、赤塚不二雄、野坂昭如小沢昭一大橋巨泉さんなど、この戦時中の年代は軍国少年しか選択肢が無かった連中で敗戦で全部が御破算になり、金輪際真面目はお断り”楽しい事はよい事だ”なのかも知れません。
マルチ人間青島幸男も佳境に入り、政治に手を染めてからは病気やら、陰険な政治の世界に毒されたのか精彩を欠くようになり、道路に座り込みや、ハンガーストライキなど意表を突く行動もギャグなのか本気なのか?、判断に困りました。
しかし、痩せても枯れても青島人気は持続し平成7年の東京都知事選に立候補し、あらかたの予想を覆し都知事に就任しますが、前知事が予定した世界都市博覧会の開催の中止を公約として当選後は、開催決議をした都議会を尻目に中止を強行します、江戸っ子らしい気概は健全でした。…曰く「中止補償は金で購いがつく。青島は約束を守れる男かそうでないのか、信義の問題なんだ」……
が、この後はすっかり静かになり鳴かず飛ばずで任期を満了します、恐らく青島さんの”楽しい事はよい事だ”の最後のデモンストレイションだったのではないのか?……豪勢で有名な渋谷松涛の知事公舎は先代知事なども入居を断った建物ですが率先入居し4年間豪邸住まいを楽しみます。<文句あっか! 俺は東京都知事の青島だ!>後は近くの都庁で書類にハンコを押す仕事、……知事権限は強大なものですから、都庁の行政が支障なく行われる必要上、都幹部と云えども知事に丁重にゴハンを御願いするわけでしょう。…殿様の楽しみも4年で飽きたのか一期で終了、退職しております。

その後に就任の東京都知事とは石原裕太郎(慎太郎)さんですが、落選候補の再挑戦で知事就任ですが、過って美濃部知事に挑戦し、人気絶頂の弟石原裕次郎を応援に呼び二人がかりでも敢え無く落選敗退します。……当時の東京都民には聡明な政治意識があったのか? …美濃部スマイルに中てられたのかは不明です。
石原慎太郎は…美濃部も青島幸男も居ない隙を突きその後に当選した人ですが、好況景気をよい事に剥き出しの利権都政を目指し、新銀行東京設立、失敗で莫大な税金を浪費し、性懲りもなく公認賭博場カジノ開催計画、臨海副都心開発、三宅島オートバイレース場、公営ギャンブル復活構想、中央市場移転計画など、利権に繋がる都政の推進を謀っており、登庁は週一、莫大な高級料亭利用出費、その他国政、国際情勢に悪影響を与える言動などを考えると、青島都知事の「俺は殿様だ、文句あっか!」の方が石原祐太郎(慎太郎)知事と比較して可なりの血税の節約だったかと思います。?………政治利権の話が出ましたが、前知事舛添さんのセコイ辞任劇のおり、元都知事石原慎太郎氏曰く……舛添さんを評して「貧乏しているんですなー」と一笑してましたが、いみじくも自らを露呈した”衣の綻び”に聞こえました。……次回へつづく
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日本橋界隈の人脈》
(6) 続、続 三越デパートと下山事件 
(5) 続 三越デパートと下山事件 
(4) 三越デパートと下山事件 
(3) 三越デパート、三井本館の事件簿 
(2) 青島幸男 鼠小僧次郎吉 仕立屋銀次 
(1) 興味津々多士済々