[河川][地域]  江戸川(1)−7 川という人工導水路と防災安全性は。

江戸川の流頭は千葉県野田市関宿町利根川からの分流です。流入量の調節に江戸川関宿水閘門があります。
往時の関宿とは、徳川家康公が1590年江戸入府し早速北の要害としての関宿藩松平康元(家康の異父弟)を城主に置きます。 その時、江戸川は未だ存在せず、利根川も栗橋から南へ江戸湾に流れ込んでいた時代です。 今の地理を御存知の方は混乱するかも知れませんが、利根川の対岸茨城県境町が関宿城と地続きの城下町であったのですから!。……関宿藩につきましては、幕末、幕府は公武合体を画策し孝明天皇の妹、和宮の降嫁に尽力したのが老中の関宿藩久世広周(ひろちか)でした。……
     
江戸川 流山附近
川の流れは太古以来延々と歴史がありますが、これほど時系列で流路を断定するのが難しく、高きより低きに流れ、気ままです。川床に土砂が堆積すれば物理的に分流を繰り返し、中世に入りますと武士の知行地として河川改修も始りますが、徳川幕府成立後、関東代官頭(のち関東郡代伊奈忠次指揮の河川大改修により人工的な流路も可能となり、大掛かりな瀬替え、新河川への付け替、廃川が目まぐるしく実施され関東一の大河利根川でさへも、その流路の変遷は覚え切れないほど複雑ですが概要は記録されております。江戸川の成立と利根川の銚子への新流路完成概要などはブログ「利根川、江戸川お江戸の遺産」
http://d.hatena.ne.jp/hakyubun/20110916/1316133033をご覧下さい。ここで人工的開削を確認いただいて現代の江戸川の実体を探って見ましょう。
流れは野田市利根運河入り口、流山市と江戸時代に舟運で栄えた街を流下し国府台、松戸市、さらに右岸が東京都水道局金町浄水場の取水塔の先が柴又帝釈天、「男はつらいよ」の定番、江戸川土手を過ぎると左岸は千葉県市川市で江戸川は左右に二分されます。
左流が江戸川放水路で行徳橋が架かり橋と水門が一体化したような行徳水門可動堰です。右流が旧江戸川で江戸川水閘門、通称”篠崎水門”です。
では寛永18年(1641)に完成した江戸川通水時の目的は?、…利根川が銚子への瀬替で旧利根川水路に江戸川を流入させ、川筋の治水(排水)と農業用灌水、最重要は物流大動脈、江戸へ舟運水路の確保でした。 現代平成のご時世の存在意義とは!……
まず、舟運は壊滅。残るは沿岸各自治体の水道用取水確保、在来の治水、農業用水、さらに、広大な水辺自然環境などとなります。 下流の行徳水門と篠崎水門は海水遡上を阻止し、水位を確保し水道用水取水が大きな目的です。
で、それがどうした!、となりますが、近頃の世情はトラフ、断層、原発とマスコミ主導で災害が目前の如く揺れていますが、現実は地球温暖化のもたらす異常気象が日常化しております。 史上稀な豪雨が関東を襲った場合、放水路の役目は荒川と利根川です。 それぞれの分流が隅田川と江戸川ですが、隅田川の流頭には岩淵水門、江戸川には関宿水門があり共に流入の抑制と阻止が目的の設備で、仮に、荒川が想定外の溢水、決壊の危機でも隅田川に放水機能がないので、都心部防災の目的からも隅田川筋は守られるでしょう。一方江戸川は、…利根川流入抑制、阻止を目的に江戸以来昭和初期まで関宿には「棒出し」を設置し、その近代化が現在の関宿水門です。 が、現代の江戸川は広大な河川敷と海まで短距離の流路から利根川緊急時、どのような選択肢があるのか?、市川行徳の江戸川放水路の目的は?、利根川から放水流入があるのか疑問が残ります。しかし市街地情況と東京東部への防災観点から、利根川危機でも江戸川流域の安全性が損なわれる事は考えられないのでは?。……
では海からの津波はどうか?、江戸に関して、近世の記録に残る津波は台風(低気圧)による水位膨張と高潮周期の合致による海水面上昇を更に台風の波浪大波が押し寄せる津波です。 地震による津波の記録は見付かりません。安政(1855)大地震は直下型で、震源は荒川(隅田川)河口付近、大正12年(1923)の関東大震災震源伊豆大島の北、伊東の東附近で東京湾口の延長線上ですが、江戸、東京での津波被害は聞きません。
この時、熱海12m、伊東8m、鎌倉6mなど外洋沿岸は大津波を記録しております。 と云うわけで東京で地震津波が無いのは偶然か、地形的特徴かは判別できませんが、もし、10m以上の大津波の襲来の結果は全くの想定外です。
……以上は河川管理、防災行政指針や科学的根拠とも無関係な単に川に因んだお話です。悪しからず、くれぐれも御諒承ください。 …… 次回へつづく… 

《江戸川》
(7) 浦安町バーチャル手帳
(6) 懐旧の浦安町
(5) 利根運河 銚子航路蒸気船から筏(いかだ)まで
(4) 流山、近藤勇の生き様
(3) 味醂の街流山と近藤勇、小林一茶
(2) 行徳新河岸と日本橋長渡船
(1) 川という人工導水路と防災安全性は