[地域][産業] 千葉県銚子市 (3)−4 漁港外港、ポートタワー、ウオッセ

「銚子の川口てんでん凌ぎ」…銚子の船方ならば皆知っている警句です。特に利根川河口を出るときの大きなピッチングで我が身を支えるのが目1杯、人の助力は期待できないと云う意味なのです。 更に岩礁に覆われ、水深が浅く風波潮流の難所でしたが、現在は河口右岸に外港が出現し、第3市場として銚子の中枢漁港となりました。 この改修で川口を利用せずに外洋からダイレクトに大型漁船が入港可能となり、第2、第1市場へも安全な人工航路を掘削して日本屈指の水揚げ漁港が出現したのです。 この計画に付帯して観光施設としてポートタワとウオッセマーケットが出現、かなりの年月になります。 ……
     
銚子漁港外港のサンマ船 下)第3魚市場岸壁の沖合トロール

天の恵みか、眼前に在る漁場が持続しているだけで銚子水産業は成立つている幸運です。今日の状態は特別な創意によるものではなく、神の恵みに依拠した結果を享受していると云えます。即ち漁業資源の枯渇問題です。銚子の北、鹿島灘の外れ那珂川河口に茨城県那珂湊漁港があります。ここの漁業は敗戦後の復興期昭和25年頃から急速に先進漁業地として脚光を浴びます。……サンマ漁とは北海道千島沖から南下するサンマ魚群を追跡する漁業ですが、当時は地元漁船が操業し移動する魚群を沿岸漁港でリレー式に漁獲する漁業でした。 このサンマ漁を那珂湊の船主達は近代漁業に転換、漁船を大型化(100トン以上)し漁業無線局はA1(電信)機器を装備遠距離通信を可能にして関東から遥か千島沖に出漁し最寄に水揚げしながら5ヶ月に及び、魚群を追い銚子沖まで南下するシステムを開発します。 サンマの漁期外は鮪鰹漁に切り替えて発展しましたが、資源枯渇から更に創意し遠洋延縄マグロ船を競って建造し大西洋、地中海を目指します。…漁業とは博打の様な業界です! 
各国の乱獲で遠洋マグロ漁も切迫し、突如日本国を震撼させた事件、第一次石油ショックが昭和48年(1973)に勃発、燃料費の高騰と各国の200マイル漁業専管区域設定がダブルパンチとなり過大投資の那珂湊遠洋漁業は遭えなく破綻、劇的壊滅となりました。…以後、那珂湊漁港(那珂湊漁業無線局所属船)60隻の大型漁船は只の一隻すら存在せず、広大な漁港にはさざ波がたつばかりです。……漁撈産業とは資源が在れば存続は易いが、一旦資源が枯渇すれば簡単に壊滅する略奪型産業の典型なのでしょう。……
     
銚子漁港夜景 下) 夢に終わった豊漁祈願…大洗磯前神社那珂湊船主奉納新型遠洋マグロ船模型

特定第3種漁港として整備され大衆魚大量水揚で活発な銚子漁港(岸壁、市場、製氷、給水)のバックボンに水産物加工産業、冷凍庫がありますが、話は後にして入港する巻き網漁船やサンマ漁船の装備などを解明いたします。……
先ず漁獲情報の根幹にソナーの普及です、対潜水艦戦兵器として開発されたソナーの民需版といえます。昭和30年頃の自衛艦のソナーはサーチライト式からスケアミング式に音波発信が進化しましたが、現在の漁業用はこの最新式で本船の2Km周囲の海中の魚群を探知します。 また漁場探索の決め手、海水温、潮目などは気象衛星NOAAからの情報を処理した海図を表示できる受像機があります。
更に航海情報通信機器として、すでに常識化しているレーダー、方向探知機、ロラン受信機、超短波無線機、船舶電話などに加えてMCP,JCP自動操舵装置や人工衛星航法システムなど高価な電子機材を駆使して効率をあげており、上記の機器類は魚群を追うサンマ漁船にも共通の装備です。 なお甲板用漁撈省力装置は省略しました。
……ここで水産業として憂慮すべきは、銚子沖漁場のイワシ、サバの資源は常に減少傾向を続け近代漁業による大量漁獲水揚の影響がどのような結果となるのか?不明と云えるのでしょう。……
冒頭のポートタワーは太平洋に突出する岬の先端から大洋を俯瞰し鹿島住金製鉄所へ大型鉱石運搬船が2、3隻パース待ちで洋上に停泊していたり、利根川河口や流域の眺望は見事です。 夕刻近くなると巻き網漁船と運搬船群が出港、大海原に消えてゆく光景もあります。 ウオッセには鮮魚類の販売、食堂が楽しめます。 ……過疎化が進む街銚子の実体は次回 …… 次回へつづく…   ……前回へ戻る


銚子ポートタワーとウオッセの詳細は》→http://www10.ocn.ne.jp/~wosse21/

《千葉県銚子市
(4) 来訪者の見た銚子の再興は?
(3) 漁港外港、ポートタワー、ウオッセ
(2) 漁業の現況は、
(1) 銚子の由来