[探訪][産業][地域] 醤油の街野田市 (3)−3 醤油の街を散策 

東武野田線野田市駅を下車しますと駅を中心にキッコーマンの醤油工場が目立ちますが、昔のように香ばしい醤油の匂いは漂ってまいりません。また働く人も格段に少ないようです。……
醸造技術の革新と構内原材料の移動、仕込みの自動化が近代的装置産業に進化した結果なのでしょうか!それにしても日本の醤油消費量約28パーセント279.000klを国内3工場で製造する会社なので駅周辺の工場だけでは能力不足かと思いましたがやはり江戸川周辺に大プラントが散在し銀色に輝く巨大タンク群がありました。 と云う事で野田の旧市街区は昔の醸造家の醸造蔵跡地や奥と称する住居、守護神社などの遺構が残されております。
野田市の探訪はある種の探険と言えるかも知れません。昔ながらの道が入り組み町名番地も見つけ難くいので地図を用意し建物などを調べてゆきますと、その分、昔の地形が保存されており遺構などからも往年の形状などの推理や、予期せぬ発見も可能でしょう。探訪愛好者には充実感ある珍しくも楽しいゾーンが用意されて居ります。……
    

(略図を参照)赤線…旧野田人車鉄道の軌道跡
では駅前から自転車置き場の僅かな人道を出ると正面がキッコーマン研究所でその先の黒塀は茂木分家の個人のお屋敷長屋門です。
今にも醤油樽を積んだ人車トロッコが出て来るような雰囲気ですが何分現在は住居でもあり立ち入った詳細は分りませんが大正十年(1921)撮影の写真の一部分に現在と全く変わらない当家の佇まいが写っております。
突き当たりが広大な茂木本家(七左衛門)醸造蔵の跡で屋敷の蔵が何棟か見えます。左折しますとMOMOA美術館、右折し、すぐに左に曲ると塀を廻らせた表門があり茂木本家の奥、住居です。
MOMOA…→MOGI-HONKE MUSEUM OF ART (茂木本家美術館)は本家当主七左衛門氏が収集した美術品を公開しているもので、特に版画類は将に本当の本物、江戸版画には感動しました。……
本家表門先の近代ビルがキッコーマン本社で、茂木本家醸造蔵跡(野田醤油第一工場跡)です。本社内には発酵調味料、醤油の資料閲覧公開の国際食文化研究センターがあり情報収集に良い場所。
道路右手の広場奥に琴平神社が見えております、有名な清水公園創始者茂木柏衛の柏屋こと茂木七郎右衛門醸造蔵守護神社です、この辺りが奥(邸宅)部分の位置で神楽堂や絵馬堂のある凝ったものですが、現在は開放されて居りません。広場、駐車場が野田醤油時代の本社跡地です。 キッコーマン本社を左に見て突き当たった道が本町通り、その昔、両側には醸造蔵が集まっていた場所で、かの人車鉄道の軌道が敷かれ引込み線から醤油を江戸川河岸の回漕問屋に運んでおりました。
本町通りキッコーマン本社の隣が興風会館、かつて野田のランドマークであった建物です、ここでは本町通りを右(北)へ商店街を観察し途中左路地に野田醤油発祥地碑(飯田家醸造蔵跡)があり遺構は有りません。
野田郵便局先の左路地には御存知キノエネ醤油本社が天保元年(1830)以来盛業中です。ここは近代工場の現在でも往年の見世(事務所)を大事に保存使用しており山下家の当主女性会長さんの心意気でしょうか。
本町通り愛宕神社交差点角一帯が野田市一番のお社で広い境内には色々な石碑や、文政七年(1824)建立の本殿の裏にはさらに醤油関係者による神社と別当寺西光院が在り見るべきものがあります。
       

               


            
茂木佐平治
本町通りをキッコーマン本社方向に戻り千葉銀行先を左折次の十字路の左先が野田市郷土博物館です、サーモンピンク色の鮮やかな塀に囲まれております。博物館では野田市の概要を要領よく展示品が教えてくれます、庭園と邸宅、茶室が茂木佐平治邸で静かな雰囲気にゆったりとした気分になれるでしょう。ここも当初の醤油醸造蔵奥(住居)にあたり脇の市民会館入り口前広場には守護神社の釈迦堂があり小学校一帯が茂木佐平治醸造蔵(野田醤油第三工場跡)の在った場所です。茂木佐平治邸は大正昭和初期に現在の邸宅の様式になりました。昭和初期には、この建物には宮様が宿泊しており、また何代目かの当主は旧野田町代官を勤めております。なおこの釈迦堂には鳥居があり仏さまが神様として祀られる不思議が存在しております。
キッコーマン本社前に戻り千葉興業銀行の路地も人車鉄道の軌道跡で江戸川河岸へ通じ、この道を約十分余りで上花輪歴史館(高梨兵左衛門邸)です。
黒板塀、冠木門、の内部三千坪の庭園は国指定文化財で有料公開されております。敷地内に引き込んだ堀には船着場を備え醸造用具などの資料展示もされ醸造家高梨兵左衛門にかかわる醤油文化と庭園が保存されております。
上花輪歴史館冠木門の前には色鮮やかなキッコーマン煉瓦蔵が長々と建っており歴史館公開日時に併せて蔵内部を見学できます、ここでは伝来の醤油醸造方法で”もろみ”熟成の巨大木樽の列が仄かな明かりのなかに静かに息づく様が窺え、製品は一味違った貴重な醤油だそうです。
人車鉄道跡を更に先十分足らずで終点江戸川野田河岸です、巨大堤防に遮られた下の古いお屋敷が当時の回船問屋枡田仁左衛門の建物で前庭のレンガ積は江戸川洪水時の水除けで建物内部は当時客に供した名残があるようですが、現在は個人の住居でありますので、公開されたものではありませんのでご留意を。
今度は土手(醤油河岸当時は無かった)上の遊歩道路を上流へ歩きましょう、木々の中にキッコーマンの上花輪プラントが銀色に輝くのが遠望され直ぐ先の土手下には白亜の城郭を模した宮内庁御用蔵が眺められ、一方江戸川河川敷も広大で一息入れるのには快適な場所であります。
その他本町通り西側一帯は道から路地へと飽かさず巡り歩けば古き建築物が散在し思わぬ楽しみに出会う事が出来ます。
今回に限っては街探訪の総花的なご案内が結構大変である事が身に沁みて感じました。 
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《参考》
野田市郷土博物館 http://noda-muse.or.jp
国際食文化研究センター http://kiifc.kikkoman.co.jp/
茂木本家美術館 http://www.momoa.jp/about1.html/
キッコーマン醤油world(工場見学その他) http://www.kikkoman.co.jp/soyworld/
上花輪歴史館 http://www.infochiba.ne.jp/FAINS/spot/0102/1927.html/

《醤油の街野田市
(3) 醤油の街を散策
(2) 人車鉄道という物流
(1) 世界の調味料「醤油」