[時事]  農業と農地法(4)−8 無責任農業政策の相関

明治維新以来の日本国の無責任体制は昨今、更に顕著に為って行く傾向にあります。日本国の新旧憲法を一寸ながめれば、誰でも分かる事実が存在いたします。
先ずは明治憲法の最大の無責任国家体制が敗戦後に行われた連合国軍による極東国際軍事裁判の東京法廷で明白になりました。…東条英機総理を始めとするA級戦犯諸氏はことごとく無罪を主張し国際裁判起訴の要旨「平和ニ対スル罪」「通例ノ戦争犯罪 」「人道ニ対スル罪」…個別の作戦についても責任を負う者は存在しません、例えば開戦時の総理大臣東条英機陸軍大将も宣戦布告の直前に実行されたハワイ真珠湾奇襲攻撃による米国人殺害など平和に対する罪も無罪を主張しております。
特に軍人諸氏は中支派遣軍、南京事件ビルマ戦線、フィリピン戦線など上記起訴要旨のすべて作戦責任者が存在しておりません。なぜか?…明治憲法の主権者天皇の権限が第一章に規定され十一条 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス。第三条 天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス。と記され、明治新政府以来軍人による天皇統帥権侵害は軍人最大の注意要項でした。…実際の作戦指導者で覚悟を決めたA級戦犯諸氏と云えども潔く作戦責任を認める…が、その結末の…天皇に帰属する統帥権の侵犯と云う汚名に耐えられなかったのでしょう。では天皇に陸海軍統帥権者としての責任が存在するのか?……憲法規定により天皇に一切の道義、責任は存在しません。
なぜか…”第三条 天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス。”と明記されております。…明治新政府の主体を占める薩長の権力者は神格化天皇に総ての責任を転嫁し、神の威光の陰に隠れて政治権力を行使した狡猾な姿であります。……しかし、薩長権力者の大きな見落としは最高の罪悪を犯したことになります。即ち日本帝国憲法は国民に対するもので、敗戦、外国軍占領を見落としており、当時の米国とソビエットロシア緊迫の国際情勢がなければ、天皇の国際軍事法廷起訴の場面もあったのでした。……

photo…極東軍事裁判法廷(市ケ谷防衛庁内)への護送バス内のA級戦犯諸氏2列目左端東条英機陸軍大将

さて、それでは日本農業の越し方から見てみましょう。平安時代にはようやく貴族から地方の武士などへ農地が分散を始め今だ荘園など存在した時代ですが、戦国時代を秀吉の太閤検地により土地→耕作農民の図式の検地帳が規定されますが、…『万葉集』巻五に載録されている山上憶良貧窮問答歌律令体制下の百姓(公民)の貧窮ぶりと里長による苛酷な税の取り立ての歌ですが、以来…現代に至る農民生活の投影でもあります。…原文は万葉仮名…
嵐まじり 雨ふる夜の 雨まじり 雪ふる夜は すべもなく 寒くしあれば 堅塩を とりつづしろひ 粕湯酒 うちすすろひて しはぶかひ 鼻びしびしに しかとあらぬ髭かき撫でて 吾れをおきて 人はあらじと 誇ろへど 寒くしあらば 麻ぶすま ひきかがふり 布肩衣(ヌノカタキヌ) ありのことごと 着そへども 寒き夜すらを 吾よりも 貧しき人の 父母は 飢え寒からむ 妻子どもは 乞ひて泣くらむ 此の時は いかにしつつか 汝が世は渡る。
天地(アメツチ)は 広しといへど 吾がためは 狭くやなりぬる 日月は 明しといへど 吾がためには 照りやたまはぬ 人皆か 吾もなれるを 綿もなき 布肩衣の海松(ミル)のごと わわけさがれる かがふのみ 肩にうちかけ 伏蘆(フセイホ)の 曲蘆の内に 直土に 藁解き敷きて 父母は 枕の方に 妻子どもは 足の方に 囲み居て 憂ひさまよひ 竈には 煙ふき立てず 甑(コシキ)には くもの巣かきて 飯炊ぐ 事も忘れて ぬえ鳥の のどよひ居るに いとのきて 短き物を 端切ると 言はるがことく 笞(シモ)取る 里長の声は 寝屋戸まで 来立ち呼はひぬ かくばかり すべなきものか 世間の道。……
江戸、明治、昭和に至り国粋主義軍国主義の跋扈は遂に日本建国以来未曾有の敗戦を体験、アメリカ占領軍は日本軍国主義の根源と断定した諸制度体制の打破を目指し占領軍命令をもって民主主義化を実行しました。その一つが農業改革で、地主4割、小作人6割の絶対的格差の打破、即ち地主農地の小作人への強制解放…を日本政府に命じ強制買い上げ農地の小作人への譲渡(廉価)を実現、日本農業は自作農民による営農体制の実現をしております。
しかし、経済原理…優勝劣敗、再びの農地流出は「元の木阿弥」と云う事で農地法、その他法整備をいたしました。……が、この占領軍による蛮勇は永年苦労を重ねた農民に燭光をもたらしますが、一変した農民権益に農水省、政治家、農業金融、農業団体更には農民により選出運営する農地管理の最高権力公的機構の農地委員会が市町村に設立され自民党政治家の誘導で巨大圧力団体化して国家財政の侵食を始めます。                               
注)敗戦後アメリカ占領軍命令で強制実行された諸事項
▲農地開放…地主農地の小作人への開放。
▲男女平等…男尊女卑の日本社会の打破、具体的実現
婦人参政権…婦人の選挙権、被選挙権の確立。
▲婦人解放(公娼制度廃止)…公認の売春制度の廃止、人身売買の禁止。
公職追放…軍人、政治家、企業経営者等の戦争協力者の公職から追放。
衆議院の設立…貴族院の廃止に伴い衆議院参議院二院制度の発足。
財閥解体…三井、三菱、住友、安田等の財閥の解体実施。
  ……先へつづく… ……前へ戻る

《農業と農地法
(8) 日本農業と中身の結末
(7) 日本農業の誤魔化し
(6) 日本農業の中身を知ろう
(5) ボタンの掛け違いは農地解放
(4) 無責任農業政策の相関
(3) 日本国の飢餓(きが)て、なんだ!
(2) 日本国の農地法ってなんだ?
(1) 世襲立国 大日本農業帝国