[時事]  農業と農地法(3)−8  日本国の飢餓(きが)て、なんだ!

私達日本人にとって、江戸時代に度々起った飢饉(ききん)の歴史は可なり悲惨な話として記録されております。古いお寺さんに詣でると必ず墓地には、飢餓横死者の供養塔なども見かけます。私自身戦中派に属し戦中戦後昭和19年から22年に掛けての飢餓(きが)体験者であり、アメリカ占領軍の食糧援助により辛くも生き延びた東京生活者だったのです。……
しかし戦時中の食料統制の延長を現在も守り続けた農水省や、JAなど関連団体、農業を得票源に設定する自民党などが終始叫び続ける、日本国民を飢餓(きが)から守る食料安全保障政策(自給率向上政策)とは経済国家日本国が求めている真実なのか?…
先ず筋道として現代の食料政策の実態確認から始めます。…日本国は貿易による経済活動を主体とした世界屈指の経済大国である事は自明の理と云えます。そこで自民党農水省とJA関連団体が主張の根幹とする飢餓(きが)に備える食糧安保政策推進…食料自給率向上政策と関連した膨大な国家予算支出が毎年継続しておりますが、目前の人口減少国家の到来に備えた国家経済に支障を来たすのではないのか?、更に商工業の振興にも悪影響を及ぼすのでは。……そもそも日本国民の飢餓、即ち「飢え」への恐怖を煽り、それを論拠として成り立つ膨大な国家予算の継続的支出には虚飾に満ちた論理が平然と罷り通っています。即ち世界農業の現状、世界経済上の農産品貿易の実態、地球環境などを無視した事によって成り立っており、日本国民の幸福度追求の支障となる筈です。……
それでは現在の食料安全保障政策は……江戸時代以後、現代にかけての日本の飢餓の実情、根源を精査して現代社会で通用しない政策論理を解明してみます。先ず、江戸四大飢饉(ききん)を調べてみました。
寛永の大飢饉 寛永19年(1642年)
全国的(日本海側被害甚大)異常気象=大雨、洪水、旱魃、霜、虫害。
享保の大飢饉 享保17年(1732年)
西日本地域(中国・四国・九州)異常気象=冷夏、虫害
天明の大飢饉 天明2年(1782年)〜天明7年(1787年
全国(東北地方被害甚大)異常気象、浅間山噴火 =降灰、冷害、
天保の大飢饉 天保4年(1833年)〜 天保10年(1839年
全国(東北、陸奥国出羽国の被害甚大)異常気象=大雨、洪水、冷夏

photo-千住金蔵寺飢餓横死者供養塔と千住宿遊女供養塔…碑文には…飢えて下民に食なし…この地に死せる者八百二十八人金蔵寺に葬るとあります。…

その他、江戸時代には天候不順でさえも飢饉は各地方に起り、慢性的な事態でもあったようです。古文書には、その結果、悲惨な飢餓(きが)による異常な社会実態が克明に記されております。また、東京近辺でも古寺の境内には各時代の行路餓死者の供養塔が多数存在し深刻な社会状況が推測出来るのです。……
では、江戸時代の農産物飢饉(ききん)による飢餓(きが)が現代日本社会で再現するのでしょうか?……NOです。経済大国日本の実力と現代の世界の現状は…農業環境、生産技術、農産品は有力な貿易産品、常に過剰な生産、海上大量輸送技術などの確立、一地域の農業災害(飢饉)など問題ではありません。しかし物を購うには対価を支出する原理、経済活動が国家の力と云う重要な道理があります。……
では、明治から昭和にかけての飢餓は如何だろうか?、……明治初期は分かりませんが大正、昭和に各地で発生した飢饉(農業災害)は江戸時代と異なり一般社会の飢餓は発生しませんが不景気による失業や倒産、農村地帯の娘身売り一家離散など農民の生活を直撃する悲惨が発生します。即ち江戸時代は飢饉=飢餓、近代化以後は飢饉=生活困難や不景気と云うパタンです。
……それなのになぜ農水省や一連の団体、自民党は飢餓(きが)の恐怖心を煽り農業政策遂行に利用するのでしょうか…私自身も戦中派ですが、戦地を敗走した兵士達、特にビルマ戦線,ニューギニアルソン島などの悲惨な飢餓体験が出版物として伝えられ、更に敗戦直後の都会生活者の飢えとの戦いが語りつがれております。この身近な飢餓リアリズムのインパクトを利用したのが現在の非道理な農業政策なのでしょう。……
更に云えば、この戦中、敗戦後の飢餓は日本帝国のアジア侵攻に端を発した世界各国との戦争がもたらした自ら招いた結果と云えます。はっきり云えば敗戦後の飢餓は戦争遂行による経済破綻の結果が食料購入不能と占領下の行政不能が原因で、アメリカ大陸には有り余る穀類が存在しており、…結果アメリカ占領軍の緊急援助で先行き餓死数十万人と云われた状況から救われた事実が存在いたします。即ち、現在の平和国家、経済大国の日本国で100%起り得ない飢餓だったのです。
……結論として現在の日本国の経済的地位と世界環境からは飢餓は在りえないのです。…但し太陽黒点の異常や大隕石群の襲来、地殻大変動など地球環境の激変、地球温暖化の加速などによる世界規模での農業破綻は所謂地域農業も食料安保論もへった繰りも、ぶっ飛んで仕舞う事でしょう。 ……先へつづく… ……前へ戻る

《農業と農地法
(8) 日本農業と中身の結末
(7) 日本農業の誤魔化し
(6) 日本農業の中身を知ろう
(5) ボタンの掛け違いは農地解放
(4) 無責任農業政策の相関
(3) 日本国の飢餓(きが)て、なんだ!
(2) 日本国の農地法ってなんだ?
(1) 世襲立国 大日本農業帝国