[歴史] 戦時学童集団疎開（３）−４ 東京空襲とB２９爆撃機の実態

新潟県の南魚沼地方は豪雪地帯で有名ですが、十月も過ぎますと毎日毎日鉛色の空が雪を降らせ、年末には１５０ｃｍを軽く超えます、スキーは見よう見真似で滑れるようにはなっておりました。国民学校卒業進学を控えた私達６年生は翌年２月に待望の帰京となります。
……この疎開先塩沢町から朝晩雄大な金城山を仰ぎ、魚野川の清流に臨み素晴らしい環境と落ち着いた街並みが在ったと思いますが、軽く半世紀以上も昔が今でも存在するのか、…仕事をリタイア後、度々センチメンタル　ジャーニーを考えましたが行くのは簡単…でも、見知らぬ街との遭遇と為ったらショックが残る筈です！…それではと、田舎芝居よろしく…「そこで忠治は考えた」…と”私も考えた”…そうだ、Ｇｏｏｇｌｅ地図がある！、早速街並を追跡、写真を隈なく調べると予感は的中です、絶対的な思い出…お寺の本堂、庫裏や質素な神社は総て異次元の風景に変わり果て？実は建替え立派になって！、お寺の参道巨大な杉並木は消え失せ、名物１００ｍ廊下の在った小学校は移転、駅も街並みも見覚えの無い絶望的な風景でした！　と云うわけで集団疎開は心の中の思い出のみ…歳月とは無情なものだったのです。

帰京した東京の様子は一変しておりました。警戒警報、空襲警報など桜上水日大予科塔屋上のサイレン吹鳴が毎日で、唯一の情報源ラジオ放送（JOAK）からはブザー音に続き『東部軍管区情報、敵B２９数目標南方洋上を北上中　関東地区警戒警報発令』などと放送されます。当時昼間の空襲は硫黄島から発進のP５１戦闘機とテニアン、サイパンからのB２９と合流した戦爆連合編隊で機銃掃射と爆弾投下です、武蔵野市の中島飛行機工場や各地軍事施設、当初の有楽町銀座は昼間の爆弾攻撃、夜間は都内各地の焼夷弾投下と昼夜に亘る空襲でした。　

Photo…空襲焼け跡、両国駅上空から隅田川下流を望む、丸いドーム旧国技館前の道路は千葉街道、右へ両国橋、下方に両国駅ホームが僅かに見える

では「超空の要塞B２９爆撃機」とは……戦争末期に至り、日米間の絶望的科学技術、工業力、物資など戦争遂行能力格差の象徴がB２９で日本軍が実用化出来ない決定的兵器機材を多数装備していたのです。…長距離航法や位置測定、爆撃目標決定（航空機搭載レーダー　ロラン装置）、大型機の多数機銃砲の射撃員による管制（射撃管制装置）、日本都市攻撃用焼夷爆弾（油脂、黄燐、エレクトロン）高高度成層圏飛行により高射砲射撃や迎撃戦闘機の回避（インタークーラーターボエンジン、高高度与圧空調設備）など先端装備と膨大な運用機数で圧倒し、成層圏飛行も快適な機内環境から女性乗員を含めて搭乗員は操縦２、爆撃､航法､機関､通信､レーダー､火器管制射撃､左､右射撃及び尾部射撃の11人が搭乗していました。
遥かマリアナ諸島から北上飛来するB２９の日本侵入最大位地目標物が富士山と云われ富士上空で東に偏進し東京上空に達するのです。しかし夜間空襲は焼夷弾の特性上、低空飛行で進入し広いコースに分散、一機ずつ順番に飛来し、世田谷経堂付近上空のコースも探照灯の光芒の中を青白く光り輝き飛び去ります、私達が体験した危機は高射砲に被弾したB２９が火を噴いて上空に達し突然爆発、空一面に四散し落下した事、…更に地上に居ても逃げ場を失う恐怖体験は焼夷弾攻撃です、サーチライトに捕捉飛行中の上空B２９から僅かに、何か火の付いた物が一つ投下され空中を漂う様に降下してきます、が真上で突然爆発拡散し一面の花火の如く光る個体に散開し風を切る轟音凄まじく落下、庭の防空壕に入る余裕も無く、軒下に身を屈めました。…が、折からの強風に流され三軒茶屋付近に着弾しております。　夜毎、西からB２９の侵入、都心市街地方向の東の空は赤く焼夷弾攻撃の紅炎が闇を彩っておりました。…
しかし、それは未だ序盤だったのです、昭和２０年３月９日夜半から１０日にかけて東京の壊滅的大空襲は江東区、墨田区、台東区、中央区（深川、本所、浅草、日本橋）一帯をB２９爆撃機３２５機による焼夷爆弾１７８３トン投下に及ぶ夜間攻撃は悲惨を極めました。…世田谷からの東の夜空が何時もと比較にならない赤白色の炎さえ見える様に輝いており、異常を告げておりました。……深川門前仲町に親戚多数が住む私達は兄と共に翌朝現地を訪れ目撃した実態は次回……先へつづく… ……前へ戻る…

《戦時学童集団疎開》
(4) 東京大空襲　併記、鬼怒川の氾濫
(3) 東京空襲とB２９爆撃機の実態
(2) 戦時の小学生
(1) 昭和１９年戦時小学生（国民学校）