昭和の方言 カエル キャール ビッキ

懐かしい昭和の時代には挨拶などに季候天気の寒い、暑い、涼しいなど、方言まじりで使われたものです。……差し詰め……いや~、寒くなりましたね、今朝起きて……などと続くのですが、「お寒う御座います」「シバレるね」「えろー寒うなりましたな」「寒(さぶ)かね」などと方言も対話の付きものでした。
私は生まれも育ちも東京ですが、今は埼玉県民をやっております。……現在の日本国はほぼ標準語に近い穏やかな表現の会話が一般的ですが、戦前(敗戦前)私が住んでいた東京下町の深川辺りでは、粗暴な言葉が平気でまかり通り、今思い出してもビックリ致します。……小さな子供でも「テメー」、「マヌケヤロー」、「ナンダトー」、「トンマ」……いまのお母さん方では腰を抜かすような対話が子供の世界でも通用していたのです。 更に辰巳芸者の本場でしたから、子供の口にする歌とは思えない、”白鷺が 小首かしげて二の足踏んで やつれ姿の水鏡” ”カミナリさんは馬鹿な奴だよ ヘソばっかり狙って わたしな~ら三寸下狙う……” 遊びながら鼻歌まじりで歌うのですから。 どちらかと云えば現代よりお江戸に近い風習だったのかも知れません。
コルゲンコーワの店頭フィギユア  

さて、今回は方言をテーマにお話を進めますが、蛙、カエルは愛嬌のあるアニメキャラクターでもあり、昔に帰って…
♪おたまじゃくしは蛙の子 なまずのまごでは ないわいな  それがなにより 証拠には  やがて手が出る足が出る♪  
静岡の民謡では ♪………ちやっきり ちやっきり ちやっきりよ、きやーるが啼くから雨づらよ♪  子供が夕方遊びつかれて「カエルが鳴くからかーえろ」と呼んで散ってゆきました。
古い話で恐縮ですが、昭和20年代の東京世田谷の経堂附近でも初夏を過ぎる夜半には遠くの田圃のカエルの大合唱が聞こえる詩情があったのですが!  と云う事で、 日本全国各地で身近にいたカエルの呼び方を調べてみます。 
標準語として蛙ですが、調べてゆくと2系列に分かれる事に気がつきました。……即ち、「カエル、カワズ系」と対する「ビキ、ヒキ、ビッキ系」です。 更に細かく調べれば日本カエル方言地系図が出来るかも知れません?…。

では、《カエル、かわず系》………かえる(全国)かわず(埼玉など)かいろ(静岡)かえろ(静岡、埼玉) がいる(静岡)がいろ(静岡)がーず(山梨)がーた(徳島)がっと(石川) げぁーる(茨城)げる(福島、千葉、新潟、山梨、兵庫、岡山など)げろ(群馬、古河)げーろ(埼玉、千葉、神奈川、長野、群馬、静岡など)げっけ(茨城) きゃーる(岡山、静岡)きえーろ(静岡)きゃーろ(静岡)ぎゃーる(福井)

《びき、びっき、ひき系》………びき(青森、岩手、宮城、岐阜、奈良、三重、和歌山、愛媛、徳島、九州全域)びっき(青森、岩手、宮城、山形、栃木、新潟、岐阜、愛媛、滋賀、奈良、三重、和歌山、九州全域)ひき(和歌山、兵庫、鳥取、岡山、広島、山口、高知、鹿児島)びっきゃ奄美大島べっき(山形)
更に拾い集めれば切がありませんが、あんご(千葉)あたび(沖縄)あっぷ(鹿児島)おんばく(鹿児島)どんこ(鹿児島)もっけ(青森、秋田)わっく(佐賀、熊本)などもあります。………などと、昔の話で……最近の田圃にはカエルなど見掛けず、どじょう、イナゴ、メダカ、ギンヤンマ、など過っての子供にとって田圃の主役達は影も形も居なくなってしまいました。………註)web資料参考”昔の茨城弁集”より