戦前日本が見えてくる(5)高麗神社と高麗聖天院

前回の埼玉古墳群をたずね出土品なども見学した暇人の私は俄然古代史に興味がわいてまいりました。………なにぶん戦時小学生時代の神話を歴史に組み込んだ歪曲国史教育をされた被害者でしたから。
律令(701年)により国、郡制度の発足で武蔵国さき玉郡が出来たとされ、行田市埼玉古墳群の豪族の遺構からこの附近が郡の中心地と考えられるそうで、明治4年発足の埼玉県名の由来とも云われております。………古墳群から渡来人の存在を目の当たりにして、更に渡来人の遺構で有名な高麗神社と高麗聖天院のある日高市の高麗郷を探訪しました。 八高線高麗川駅から西に約2km足らず清流高麗川を渡ると高麗神社と聖天院があります。共に大駐車場が完備して将に観光地化とも見えるのですが、更に在日の方々にとっては、改めて1300年も遡る同族の偉業と存在感には感動があるのでしょう。そもそもの由来から解明してまいります。この一帯の高麗名は古代朝鮮の「高句麗(こうくり)」の事で、紛らわしいのは”こうらい”とも呼びますが”こま”(高麗)が一般名称のようです。

photo…高麗神社  
716年に、武蔵国高麗郡」が置かれ、高麗人達が移住した経緯から………先ずは高麗神社の祭神の高麗王若光とは……666年(日本書紀より)高句麗から日本に派遣された使節として来日し、668年高句麗が中国「唐」と新羅の連合軍により滅ぼされ、若光はそのまま滞在します。……716年頃に駿河、甲斐、相模、上総、下総、常陸、下野の高麗人の1799名を選び未開の武蔵野国に移し高麗郡がつくられ、開拓を図りますが、その首長として高麗若光が託されたのです。

……可なりのの成果を成し遂げたのでしょうか、703年には天皇より「従五位下高麗若光に王の姓を賜う」と日本書紀に記されている様です。………若光は元々は高麗の王族の出と云われ、当地で没しますが、その徳を偲び人々は神として祀り、御霊を「高麗明神」として高麗神社が創建されたとされます。  なお高麗神社の宮司は代々若光の子孫が務め、現宮司は60代目のお方だそうです。またお社は近年再建築された壮麗な建物で境内は広大で山腹に位置しております。その外神職の旧住居は建築年代、慶長年間(1596〜1615)と伝えられ国の重要文化財に指定されております。


高麗聖天院勝楽寺

では………本題の「戦前日本が見えてくる」……多少、明治時代以後の現代史が必要になるのですが!……明治43年(1910)日韓併合と云う現代では考えられない歴史的不条理が存在したわけですが、大日本帝国の為政者は……歴史の実態としての古代朝鮮半島から多数の渡来者の日本列島への融和、土着化を逆手にとって両国併合必然の方便として宣伝に利用したのです。……高麗神社が明治時代後に一躍有名になった根源です。…境内には当時の政府高官、朝鮮総督府高官の寄進した灯篭や神社名石碑、参道にはお手植えの杉の木など、よく観察すると更に大日本帝国王公族となった韓国王朝の最後の皇太子李王垠殿下と李王女王殿下(梨本宮方子)お手植えの杉の木もあります。……石段上の拝殿への神門の扁額、「高句麗神社」を揮毫した署名に「朝鮮人正二品 趙重應」と小さく書かれておりますが、この方は大韓帝国の主要大臣を歴任した親日家で且つ日韓併合条約に賛成した方です、現在韓国では”売国逆臣”と糾弾されるお人ですが。……しかしながら遺構が歴史の真実を物語っており、高麗神社は現代史、古代史からの貴重な存在感であり、可なり洗練された教養を
備えた神官の存在が歴史好きには頼もしく嬉しいのです。

高麗川高麗神社から約15分程度の距離に高麗聖天院があります。ここも山腹に建立された壮大な寺院です。古建築物に特別の関心がある私には天保3年(1832)建立の巨大山門でした。更にはずれには「高麗王若光」の墓とされる五層の石塔が鞘堂内にあります。………この寺の由来は高麗王若光と共に高麗から来た侍念僧「勝楽」が若光の死後菩提を弔う寺の建立を発念し計半ばで斃れ、その意志を若光の三男と孫が引き継ぎ御本尊として歓喜天を祀った事で、この寺は高麗聖天院勝楽寺と称するようになったとされます。この瀟洒広大な境内も在日の方々にとっては心の安らぎの聖地なのでしょう。………この高麗郷界隈は清流高麗川と共に巾着田の遺構や彼岸花とも曼珠沙華ともよばれる花の大群落などと共に古代の寺社遺構の存在で秋の好日、絶好の行楽地でもあります。………が、過疎地の制約は公共交通機関の無い事、総てをカバーするには、残念ながら自動車使用が必要かもしれません。………
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《戦前日本が見える》 
(11)神社御神体 究極土俗神
(10)御祭神 仏教神社
(9)主祭神 神さまになった人々
(8)神社いろいろ 神さまの実態
(7)絶縁される神社本庁とは
(6)遂に富岡八幡宮が絶縁…神社本庁
(5)高麗神社と高麗聖天院
(4)朝鮮半島から人材流入と強制徴用
(3)強制徴用とはなにか
(2)法治国家の今昔
(1)従軍慰安婦問題と安倍総理大臣