[河川][歴史] 昔の荒川探索行(4)元荒川が大河の残滓を残す流域へ

荒川と云うだけでも、寛永6年(1629)の熊谷久下村の瀬替え以前と現代と取り違える事がありますが、ここではその又昔の本流元荒川の事になります。 前回のポイント鴻巣市川面の武蔵水路との交差地点から更に下る事にいたしましょう。毎回の事ですがG00gle mapと併設の航空写真を使って追跡を御願いします。……特に航空写真は平面と3Dに使い分けて川の状態が手に取る様に分かり、流路探索が陸の孤島の如き地域の現地確認より更なる全体像の掌握で情報力に勝っております。……
この地域での元荒川の性格は、昔風に云えば悪水落し(排水路)の本流で湿地帯各地からの排水路(悪水落し)を集めながら流水量を増やしながら下りますが、確たる水源の無い乏しい流水量です。但し以前は堰を設置し小規模農業用水取得の設備も散在した様ですが、一帯の灌がいは多分利根川水系の近代的用水路に依拠しているのでしょう。



photo…慈恩寺と見沼代用水水路(加須市附近)では……田舎を流れる並の川の風情の元荒川を前回の鴻巣市川面附近から下ります。……流れは上越新幹線に絡みながらJR鴻巣駅北方の鴻巣市安養寺地区には初めて近代的の安養寺堰が去年、平成16年に完成しており、一帯に存在した江戸以来の堰などを新設安養寺堰に集約したものですが小規模な取水量で、埼玉県により築堰されたものです。その他、元荒川には下流岩槻市南部に大規模な末田須賀農業用取水堰が在り併せて近代的取水堰は二ヶ所あります。……と、云う事で元荒川の取水堰の話は末田須賀堰に集約して当地のロケハンはパスして更に下流に………
鴻巣市役所の北附近から今度は上越新幹線に絡みながら、元荒川は更に流れ下り埼玉県白岡市柴山では南下する見沼代用水と立体交差します、原理は前回のポイント武蔵用水との立体交差と同じく、サイホンの原理(逆サイホン)で元荒川の川底下を通過しております。この施設は当初、見沼代用水掘削時の享保12年(1727)開削した歴史があります。……サイホンの原理(逆サイホン)は既に江戸時代の用水施設で可なり普及した技術である事がわかりました。……


photo…元荒川 岩槻慈恩寺下流の開削部分と旧流路の残滓(上流を望む)
……田舎の川、元荒川は更に下り、白岡市西で左岸に星川が合流しますが、可なりの流水量を元荒川にもたらし、流れは南下します。そもそも現在の星川は利根大堰から取水した見沼代用水からの分流で元来が貧弱な元荒川へ利根川流水を分水する目的が存在するようです。 ……南下する元荒川はこの辺りから昔日の荒川の片鱗を序々に見せ始め蓮田市を軽由し岩槻市に流れ込みます。 元荒川の左岸は黒浜町で蓮田市が尽き、岩槻市へ……岩槻市上野4丁目には鉄骨組三連の元荒川水道橋がが架かり下流には城北大橋、直ぐに水道管橋、更に下流の県道65号線には慈恩寺橋と橋が重なります。 この慈恩寺橋は江戸時代の日光”お成り街道”裏往還(県道65号)で幸手日光街道へ繋がります。……

photo…元荒川旧流路跡に残る自然堤防(赤間堀緑地)
さて………ここで元荒川に一寸煩雑な推理が必要な話となります。以下は私の辿り着いた結論です……<お願い>…Google mapの航空写真で慈恩寺橋を御覧ください……
慈恩寺橋から下流へ、人工的な直線の流路…東宮歩道専用橋(東武野田線鉄橋上流)までの元荒川は明治22年の段階では地続きの状態で現代に流路改修で開削された川筋と断定しました。では、検証します……元荒川右岸慈恩寺橋脇の広大な空き地を辿りますと古刹「龍門寺」附近でUターンし県道R65の人間総合科学大学岩槻キャンパス(旧河道)の先の森は元荒川旧流路が構成した自然堤の遺構で現在は赤間堀緑地です、更に岩槻市総鎮守久伊豆神社の広大な社叢をかすめて遊水地を経て元荒川へ戻ります。……

photo…岩槻の総鎮守久伊豆神社この歴然と現れた旧河道は横U字状で内側の地名は「南辻」です。…この地名を解明しますとこの地が左岸と地続きで在った根拠が判明しました。 即ち………元荒川左岸の北には慈恩寺台地が存在し、江戸時代から有名人気な巨刹で坂東三十三観音霊場十二番の札所の慈恩寺があり、一帯の地域十ケ村が合併し慈恩寺村を明治22年(1889)発足させました。……慈恩寺、表慈恩寺、裏慈恩寺、古ケ場、徳力、鹿室、上野、上里、南辻、東岩槻(一部)以上の十ケ村は総て元荒川左岸の隣接した村なのです。……現在右岸の飛び地、「南辻」は明治22年には確実に左岸と地続きであったと断定いたしました。この一帯の湿地帯は岩槻市の整地整備計画でも最後に残され、公有空き地(旧河川跡)が歴然化しているものと思われます。……
岩槻地区は元荒川に関わる話題の豊富な場所で、更にエキサイティングに流れ下ります………
……次回へ続く
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    《昔の荒川探索行》
(11)中世の荒川本流「綾瀬川」と草加市
(10)元荒川由縁の街 越谷市
(9)古隅田川自然堤防の集大成「金山堤」
(8)中世の氾濫原、古隅田川流域の実態
(7)大地に刻まれた古隅田川自然堤防を歩く
(6)荒川を支流にした古隅田川(隅田川)
(5)岩槻市元荒川と謎の古隅田川
(4)元荒川が大河の残滓を残す流域
(3)元荒川を下る
(2)荒川西遷(瀬替へ)の要 熊谷市
(1)人工河川荒川の成立(西遷事業)