[事件事故] 警官隊の罵倒行為 沖縄「土人」 足尾鉱毒事件「土百姓」

今年は季節が変わったのに、抜けるような秋晴れのすがすがしい陽気が少ないようです。 …何とか弛緩した体に生気を求めて勝手ながら気ままに近郊探索などを楽しんでおりました。
が、……世の常とは云え、嫌でも聞こえて来るのが社会の出来事です。沖縄の米軍ヘリコプター移設工事現場で抗議する住民に大阪府警隊員が土人とかシナ人などと罵声を浴びせた事件がありました。 戦前は別として現代では死語化している言葉の再登場には驚きです。復古調の安倍政治の影響なのか?……「土人」「シナ人」にはヘイトスピーチ的な意味が隠されているようにも聞こえ沖縄の人々の心にはグサリと刺さったように思えます。………
私は少年時代は東京の下町深川門前仲町に住んで居りましたが当時の江戸っ子と云われた人達は口が悪く、すぐに喧嘩腰でした。河岸で仕事する叔父さんに誘われ外出するのは嬉しくても出先での怒鳴りあいが子供には怖くて悩みでした。…例えば市電内でも、足を踏まれたなどと騒ぎが起ります……痛えじゃねーか、何処に目を付けてやがんだ!……なにお、痛えような足だったら、すっこめとけ! 市電も結構混んでいましたが……押すなこの野郎!……そんな処に”突っ立つ”てちゃ邪魔だってんだよ、どけ、どきやがれ!………
戦前は特に言葉が強烈でした、まあ能書きを云えば人権人格、弱者への意識欠如だったのでしょう。………足の不自由な人をビッコ、視力の無い方をメクラなどと言い、……”上げたり下げたりビッコの提灯”。とか、……”メクラ蛇に怖じず”。など日常的な言い回しでした。………
気を付けなければならないのが外国人への蔑称です、ま、明治以来日本人も海外文明の恩恵を受けて曲がりなりにも先進国の仲間入りはしておりますが、過ってはその容姿習慣などで外国では可なり蔑視蔑称の対象で仕方の無い事、お互い様かも知れませんが、面と向って言えば正真正銘ヘイトスピーチになります。…最近の話ですが日本観光の韓国人お客様に対して予約切符を発行したバス会社が氏名に「チョン」と加筆し問題となった話しですが、最初意味が良く分かりませんでした。…我ながら慌てたのは戦前普通に「馬鹿だチョンだと云われる……」などと日常化した言葉でしたから。
特に私自身の失敗は地方の港町に上陸、中華料理店で食事の時、中国酒を飲んでみようと聞き覚えた”チャンチュー”と頼むと中国人のご主人は何気なく出してくれましたが、…後の祭りか「チャン酎」とは中国酒の日本語蔑称でした。未だにこの一件は忘れておりません。………
さて、話は戻りまして大阪府警土人発言で、とっさに思い出したのが時代は遡り、田中正造さんがクローズアップした足尾鉱毒事件の被害農民が明治33年(1900)12月13日大挙集合して東京の政府へ直訴の押し出しで、利根川河畔群馬県邑楽明和町川俣(現)で待ち受ける阻止の警官隊と衝突した有名な川俣事件です。草鞋履き食料を背負うだけの農民に警官隊はサーベルを振りかざし突撃します。
…戦前私の少年時代の一般警察官の腰にはサーベルでなく海軍士官のような短剣を下げておりましたが、その昔はサーベルだったようで、鉄の鞘を紐で括り抜けない状態で農民を襲い打据えたのです。警官は口々に「土百姓、土百姓」と叫びながら………
私は沖縄基地問題紛争と足尾鉱毒事件の共通点に驚いております。即ち沖縄は日本国の安全保障の問題、一方足尾も軍拡時代の基礎資源としての銅鉱山の確保は日本国の安全保障の一環でもあったのです。…結果は両事件共通の憲法法律を超越した国家権力の行使が住民の被害を加速し放置した事です。足尾鉱毒問題では川俣事件の前年、明治32年栃木県鉱害調査では既に鉱毒死と死産は1,064人と報告されております。両事件とも各地から召集された警官隊は奇しくも被害住民に対して、沖縄では「土人」、川俣事件では「土百姓」と罵倒して実力行使をしております。……
しかし、一方で現代社会での民主警察に対して感謝の気持ちも多分にあり、現代の複雑化した犯罪を可なり解決して社会の安全は外国と比較すると賞賛される価値があると考えております。
………おわり…