[事件事故] 鉄道大事故 （2）−2 ＣＩＡ本郷岩崎邸と国鉄三大ミステリー事故秘話
旧跡本郷岩崎邸は不忍池を挟んで上野の山の対岸に在った越後高田藩江戸屋敷跡を岩崎家当主弥太郎が購入、明治十八年にこの地で生涯を終えております。その後長男の久弥により明治二十九年に現存の洋館を含む広大な屋敷を建築して敗戦後のアメリカ占領軍接収までは岩崎家の住居となっておりました。
この、コロニアル調の古い洋館は明治時代のアメリカ人建築家ジョサイアコンドルが英国、イスラム、ルネッサンス、スイス、日本の様式の特徴を取り入れたユニークな設計ですが、敗戦後は数奇な歴史経緯があります。……
岩崎邸は駐留米軍の接収でイワサキハウスと改名、財閥解体により物納されて国有財産となり、返還後は昭和４４年（１９６９年）に最高裁判所司法研修所を経て、建物と庭園が平成１３年に東京都に移り、国重要文化財に指定され整備、東京都庭園公園として公開されております。
また、岩崎邸の延々と続く古い煉瓦塀に沿った無縁坂は森鴎外の名作”雁”のエピローグを彩った場所としても有名です。……
アメリカ中央情報局紋章(C.I.A)
だが、明るい建物のイメージとは裏腹に接収アメリカ軍の特殊機関Ｃ.Ｉ.Ａ Ｃ.Ｉ.Ｃのキャノン氏の主宰するキャノン機関が絡む歴史的事件の疑惑？が敗戦後の混沌とした社会を象徴する騒ぎに発展します。
先ず敗戦後の日本社会の環境は軍国主義の反動から保守と社会主義が拮抗し、現憲法下最初の内閣は日本社会党党首の片山哲首相でした。 占領米軍にとってアジア情勢は毛沢東の中国共産党軍や北朝鮮軍の存在の増勢は止まらず、日本の共産主義の跋扈は由々しき問題として防共的な謀略政策、対応の疑惑が常に付きまとう時代でもありました。
…おりしも昭和２４年に自民党吉田内閣が成立し国鉄職員約１０万人の人員整理の予定が発表され、対する国鉄労働者の組合活動も先鋭化し国とのトラブルとストライキが続く中、７月４日一次解雇者３万人に指名通告がされました。 ……突発的事件が７月５日に発生。…国鉄総裁下山氏が出勤途中謎の失踪後、常磐線綾瀬駅手前線路内で翌日、轢断遺体で発見されたのです。 更に、一週間余後の１５日には中央線三鷹電車区車庫から無人電車の大暴走事件が起こり、…更に八月には東北本線福島県松川付近の線路妨害で旅客列車転覆の松川事件などで多数の人命が失われました。
一連の事件は国鉄三大ミステリー事故と呼ばれ占領下の世相の反映でもあります。日本国独立の昭和２６年（１９５１）にはプロレタリア作家、鹿地亘氏（のち二重スパイ、電波法違反等で無罪判決）がキャノン機関の本郷岩崎ハウスに拉致監禁されたとされる？、事件があるのですが、真実は闇の中、二重スパイ露見で自らＣＩＡに保護を求めて行ったとされる話まで起きます。 先鋭化した共産主義者と対立するCIAの謀略説を推理したマスメディアが活況化しました。では
国鉄三大ミステリー事故の概要…
下山国鉄総裁轢断事件……７月５日出勤途中、日本橋三越で公用車を下車し、”５分程度の買い物”待つようにと言い残し消息不明、翌日常磐線綾瀬の踏切りで轢断遺体で発見。…遺体解剖所見で生体轢断(自殺）、死後轢断(他殺後轢断）などに分れ、監察医務院、東大、慶応大の所見も二分され終始は着かず、 警視庁内部でさへ捜査一課は自殺、捜査二課は他殺を主張する有様で決着出来ずに捜査は終了しております。…
真偽は別として、三越店内にて数名の男と一緒に居た、地下鉄銀座線電車内目撃、事故現場近くの東武線五反野駅改札係員と会話、駅近くの末広旅館に滞在、午後８時過ぎ、服装格好のよく似た人物の目撃情報など、…多数の情報が新聞報道されておりました。加えて、作家松本清張の「日本の黒い霧」など多数の書籍が出版されＣＩＡキャノン機関の謀略説が多数で混迷は更に深まりました。……
中央線三鷹駅無人電車暴走事件……下山事件の１０日後の７月１５日午後９時過ぎ三鷹電車区車庫から７輌編成の無人電車が６０ｋｍの速度で下りホームの側線に進入車止めを突破し商店街に突っ込み転覆６人が死亡、運転席コントローラーのノッチは紙紐で固定されていた。……
警察は国労組合員の１０名の共産党員と指名解雇者の運転士竹内景助を逮捕、裁判過程では偽証やアリバイ証言で混乱し、地裁では単独犯行、竹内のみ無期懲役、高裁死刑、最高裁で死刑確定し竹内受刑囚は獄内病死でした。
裁判中の竹内被告の供述は定まらず無罪、単独、複数犯行と７回変化します。特に単独犯行を認めれば、たいした罪にもならず、共産党組織の地位を保証すると共産党関係弁護士に示唆されたとも供述しており、真実とはなにか。……
東北本線福島市松川列車妨害脱線転覆事故……下山事件の４０日後の８月１７日午前３時９分に青森駅発上野駅行上りＣ５１蒸気機関車の旅客列車が福島市松川で脱線転覆し、機関士、機関助士計３名が死亡した事故。……
事件捜査は国鉄大量解雇に絡む見込み捜査で始ります。日本共産党の影響下にある国労と東芝松川労組の謀議による事件として国労１０名、東芝労１０名計２０名を逮捕起訴して地裁、高裁で有罪１７名（死刑４名）の判決は最高裁で差し戻し、高裁判決は全員無罪となりました。 ……検察による被告人のアリバイ実証をする証拠メモ（団交出席者、発言等）の隠蔽が発覚、併せて国鉄松川現場には線路撤去に使うスパナが存在しなかった。 …後日談として真犯人を名乗る手紙やキャノン機関員とともに線路取り外し作業をした本人の手記など、が流布されました。
真犯人は誰か？…列車転覆致死罪の捜査は続けられず、時効を迎えます。
以上簡単な概要でしたが、各事件(事故）とも多数の出版物があります。推理解明は煩雑を極めます。 結局、激しい思想対立時代が真実を覆い隠し、結果真相は時間とともに流れ去って行きました。
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