[地域][風俗] 横須賀事情(9)−9 横須賀のオンリーさん

 阿木耀子作詞 宇崎竜童作曲のダウンタウン ブギウギバンドの歌が以前ありましたが、戦後の横須賀の街を説明するのにピッタリのイメージと思います。 敗戦以来帝国海軍の壊滅で産業らしき物は皆無の街にNAVY相手の外人バーが唯一 活気のある商売でした。
昭和28年に朝鮮動乱も終結しますが、米国と共産主義国ソビエットとの緊張関係は一向に収まらず横須賀軍港には太平洋や日本海域を遊弋するアメリカ艦隊がしばしば補給、保養、整備に入港し、乗員が雲霞の如く上陸し街はセーラー服一色になります。
待ち構える日本勢は当然女性の出番は太古以来の物の道理でしょう。
現在の基地正面ゲートからの上陸員を目当てに国道を挟んで出現したブームタウン「ドブ板通り」と呼ばれる地域が出現、米軍許可の飲食店Aサインバー街となり、失業都市横須賀を支えていたのです。
と云うことで港のヨーコ ヨコハマ ヨコスカの歌はAサインバーのお話!。 ここで働く女性達はどの様な生態なのか? 一過的な外国人兵隊相手の仕事ですから、目的は、体を張ってもお金を稼ぐ決意の人が大勢だったでしょう。としか云えません。
一方そのものずばりの商売「洋パン嬢」も各地から相当数集まってきておりましたが、Aサインのステッカーは貼っていない、なにやら英語だけの看板を出したバー風の店とか、しもた屋風の大きな建物を部屋割りして女性が屯す場所がありましたが、兵隊が酒を飲むクラブのような店があり女性の出入りは自由として洋パン嬢と兵隊の交渉場所を提供して繁盛するとか、流石に管理売春スタイルでは無かったようです。
繁忙期にはパイラーさんも街に出動、それなりにキャッチします。 
昭和32,3年になりますと、東京では「リンタク」もほぼ姿を消しましたが、横須賀では街角の客待ち風景があり、実はポン引きさんなのでした。
洋パン嬢も入港艦船の暇な時は日本人客も取っていたのです、ポン引き氏…「今日は、いかがです、可愛い子居ますよ! 顔だけ見てくれませんか、気に入らなければ他にも居ますから構いませんよ、…」などと誘いリンタクに乗せて洋パンさんのアジト訪問ですが、街の隅々に住み着き、リンタクの登れない崖上の家にも女性は散らばっておりました。
女性の対応も慣れたものでポン引きさんに呼ばれて顔は出しますが、ニッコリする程度で直ぐ引っ込んでしまいます。とうぞ御自由にと云う事か、効率的と云う事か、後はポン引きさん任せです。
また日本人客にしてみれば、すっかりアメリカナイズされた女性からは、赤線青線とは違うホットな体験が面白かったのかも知れません?…そ、そこをもっと詳しく!……は、ちょっと無理、私としては詳らかに書きたいのですが残念………!
艦隊入港時になりますと、パイラーはこの辺鄙な丘の上まで兵隊を連れてくるのでステンコ米兵はやたらに見掛けました。
更に発展して、海に近い日の出町界隈にはアパート程度の建物に英語でなにやらホテルの様な看板をだした店が無数に出現し兵隊が来れば登録した洋パン嬢に電話するシステムでした。 現代モグリ売春のラブホテル利用などの手口の元祖なのでしょう。……
その後平成時代に入りますと事情は一変し、今度はアフロアメリカンなどと交際希望の日本人女性にYOKOSUKAが人気の草刈場になった話も聞きました。
さてと、オンリーさんに移ります。この人たちはプロの洋パン上がりの人や一般の女性が米兵と一緒に生活しているケース。 また、上級士官など幹部相手の洋パン族(高級洋パン)など、ごっちゃにして呼ばれている名称です。
普通、横須賀でのオンリーさんとは市中に家などを借り米兵と同棲している女性で、これも、結婚、内縁、契約同棲と種々雑多で第三者には分りません。 結果的に見れば契約的同棲が多かったのでは、この種の女性はまさに自由奔放に近く、艦船乗員など出港中は不在ですから、オンリーさん達は日本人バーなどのホステスや、いろいろ楽しんでいたようです。 
丁度ソ連人工衛星スプートニクが成功し、私も広島の江田島と云うところで夜空を移動する衛星を目視した記憶があります、その後5〜6年横須賀市の住民になりましたが、当時街にはポールアンカの歌、”ダイアナ”が大流行していた時期、バーの馴染みのホステスさんがオンリーさんでして、一度、昼間に招待されましたが、日本家屋を借り、主人は艦隊乗員、小学生の娘がいると云っており、夫婦か、同棲か、契約か、分りませんが、 ま、昼間の顔は普通の女性に見えました。
現在の横須賀市は基本的には昔と同じですが、すっかり落ち着いた街に変化、アメリカ艦隊は横須賀所属ですから、入港時、乗組員はそれぞれの落ち着き先に帰ってゆくのでしょうか、ここのNAVAL BASEは世界屈指の機能、規模で、まさに小都会といえる生活空間が存在し家族住宅、宿泊施設、ショッピングセンター、その他娯楽施設も完備し円高レートなど無関係な格安生活ができるのです。
オンリーさんは? 基本的には同じ、横須賀中央より南へ埋め立てなどで住宅街が新設され堀の内方面の人口が増えておりますが、アメリカ兵とのカップルも夫婦か、同棲か、契約か、分らないのは同じです、既に日本も国際化した感覚ではオンリーさんなどとは言わないのでは?…………前へ戻る

《横須賀事情》(9) 横須賀のオンリーさん
(8) 洋パン嬢とオンリーさん
(7) 横須賀の落穂拾い 小栗忠順という日本人
(6) 横須賀の落穂拾い 横須賀の遊廓
(5) 横須賀と芥川龍之介
(4) 海上自衛隊の創設期とU.S NAVY
(3) 海軍遺構と長浦港自衛艦隊
(2) 横須賀帝国海軍の物語
(1) 横須賀 街の今昔