[探訪][地域][寺社] 向島を歩こう(3)−5  江戸石工文化の魅力。

私は浅草近辺に所要があると、ふらふらと向島に足が向いてしまいます。…何時ものところで、何時もの様に待ってます。と約束を交わした心持になるのが不思議なのです。
お前さんお歳はなんぼにお成りか、と訊ねられると面目ないのですが、実は三囲(みめぐり)のお稲荷さんの鳥居のそばにお座りして待ってるお方がいるのです。
容姿端麗、さらに微笑んでいるような純日本美人に見えます、お里は日本橋越後屋さんで木綿を商う向店(むかいだな)だそうです。
御歳はと!、書付を拝見します、、えぇぇと…享和2年生まれですから、かれこれ二百九歳でしょうか!
昼日中から寝ぼけているのか、落語の”よたろう”さんかいとお思いでしょうが、ちょっと、ああた、お待ちください。 この写真…、日本広しと云えども右に出る器量良しのコンコンさんは居ない筈ですが

今日も三囲神社の参拝に参りました。何時ものところで何時もの様に待って居てくれた彼女に一安心、…ただ雄(オン)か雌(メン)かは定かでありません?
なお彼女のお役目は神様のお使いをするお仕事と聞いてましたので、神様に失礼のない様、何気なく一寸一瞥御参拝を先にすませます。
境内は江戸の石工の造形物が無数にあり、美女と野獣を髣髴させる、狛犬さんも沢山あり、お顔をよくよく見ますとガッハッハッと金歯を剥いて笑うおばさん、おじさんをイメージして、なぜか親しめるのです。また随所に江戸文化の多様な石造物と石碑があり、丁寧な説明文が立てられております。
お社の裏手に回りこんで下さい。小さなお稲荷さんの祠が散在しております。 ここでもお宝を再発見できる穴場です。 無造作に置かれた子狐、だいぶ傷んではおりますが、つい可愛さに見惚れてしまいました。 そのほか昔の謂れに、神狐を呼び出した老婆夫婦の石造物もあります。

さらに最近奉納されたブロンズのライオンさん、そこはそれ三囲さんと云えばお江戸以来の日本橋越後屋さんの守り神です、このライオンは以前池袋三越さんで門番をしていたそうです、見覚えがある方は会ってやってください。
さて、やっと参道に戻りました。昔の話、御婦人の鑑賞は”夜目遠目傘の内”などと云われますが、このおコンさんは雨、風、日照り春夏秋冬何時でもお綺麗、プロポーションも抜群です。…長年の歳月に耐えた石造物が風化を免れているのは珍しい事、相当に吟味された石材を使用しているのです。さらに石工の創造力の結集から生まれたお江戸の傑作!、さすが越後屋さん…なのでしょう。

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向島を歩こう》 
(5) 世界一のスカイツリーと東武鉄道
(4) 牛島神社の撫で牛談義
(3) 江戸石工文化の魅力
(2) 御祈願 向島三囲神社
(1) 墨田区向島