[時事][産業]  消えた職業(6)ー7 製造業の辿る道は。

日本海運業の現況と日本人船員壊滅の経緯を見ますと、製造業の環境はすでに海運業の類型的パタンに陥り、端緒は現れていると思えます。……
…昭和30年後半、日本経済は高度成長期に入っておりましたが、敗戦で壊滅した海運業界は不死鳥の如く甦り、日章旗を掲げた船舶が多数世界の港湾で見掛けた時代です。 船員は高給所得者、基幹産業従業員として脚光を浴びておりました。
しかし”好事魔多し”天国から地獄へ!、最早日本人外航船員はその職さえも追われ日本人の職業として成立っておりません。 国際海運界の標準労働コストは途上国船員がスタンダードなのです。
     
過って、富裕団体”日本海員組合”は賃上げストライキの指令一下、世界各地の船舶は一糸乱れぬ行動で強力な組織力を誇り、労働界のリーダーシップを発揮した時代でもあったのですが。
しかし、海陸空の運輸交通業は経済繁忙期には容易に参入出来る業界で、早速ギリシャ系船主が現れ以後過酷な国際競争が始ります。
当時、すでに修理船ドックなどで目撃した先進海運国英国船では数名の幹部以外は旧植民地の船員が占め、突然のイスラムの礼拝には驚いたもでした。
更に低開発国諸国も船さえ手当てすれば、コストの安いトランパー(不定期貨物船)業者として積荷の争奪に参入する様になり、経済自由化、国際標準化のうねりは貿易国家日本の基幹産業海運業を襲い、生き残りを掛けた猛烈な合理化(国際スタンダード)が始りますと、!
最重要の資産たる船舶を外国籍船(便宜置籍船)に移転し税金の軽減、船員の外国人化を計ります。 よく注意すると分るのですがモンロビヤとかパナマ籍の巨大タンカーやコンテナ船は実は日本郵船商船三井川崎汽船など海運各社の支配運航船です。
以下は日本海運業の船員の現況を示す指数です。2年前の2008年の日本船主協会のデータから
<支配船舶と船員>
●外航船2,653隻の内、日本籍船98隻 3,7%
●船員数61,019名の内、日本人船員2,621名 4,3%です。
<支配下外航船標準23名配乗一年間の人件費>
●幹部船員日本人4名、外国人19名 ……196万$
●船長以下23名外国人(フィリピン他) ……87万$
現状の大手海運会社は以上の合理化とコンテナ船が象徴する積荷別の専用船化とインマルサット衛星の恩恵で管理運航技術の高度化、所有船舶の規模などで競争力は維持しておりますが、反面、国益は失われております。 
企業が当然還元すべき、税金、雇用、人件費、など外国に流失です。
今後大企業の生きる道は開発途上国並の労働コスト、発展途上国や製品需要地へ工場移転へ、更に本社機能の外国移転となればワールドワイドな世界企業が見えてまいります。
海運業と製造業の類似性は以下です。
《海運業》             《製造業》 
便宜置籍船           ⇒ 傘下工場の海外移転
保有船に外国人配乗       ⇒ 傘下工場従業員に外国人採用
このパタンが製造業に類型化すれば、国内の労働雇用はどこへ行くのでしょうか?         ……次へ続く… ……前に戻る… 

《消えた職業》
(7) 製造業の現況は          
(6) 製造業の辿る道は
(5) 新宿風俗トライアングル 昭和2,30年
(4) 占領米軍時代と青線etc
(3) 赤線青線、パンパン、オンリー、洋パン嬢
(2) 公娼、私娼
(1) 現代